「文学国語」ダイジェスト版
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作小説◉山月記 人間李徴の悲劇。難解な語句について丁寧な注をほどこすとともに、作中に登場する地名に対応した地図を示し、中島敦の文学世界に丁寧に入ってくことができるよう工夫した。◉窓 郊外へと向かう急行列車に乗る「僕」は、車内で「短編小説」に話しかける。擬人化された「短編小説」が作中に登場するという、さまざまな解釈が可能な寓意の込められた作品。◉山椒魚 本作に描かれた閉塞的な状況と深い悲しみや孤独、他者との関わりによる慰めは、いつの時代においても胸を打つ。童話的な世界に寓意を読み取る中で、文学への興味・関心の高まる作品。◉沖縄の手記から 戦争の中で懸命に役割を果たそうとする登場人物たちの姿が心を揺さぶる作品。惨禍の中にあっても人間らしさを失わない登場人物の姿を通して、生と死について考えを深めさせたい。◉こころ 今なお近代文学の金字塔として、不朽の輝きを放ち続ける一作。どこまでも人間の心を追求してやまない漱石の精神性を感じ取ることができる。丁寧かつ細緻に描かれた人間の心の機微を読み取らせたい。◉鞄 「鞄」に行動を左右される人間の姿を描いた寓話的な作品。人間の自由意志とは何かについて考えさせられる。さまざまな情報により人間の行動が左右される現代においてこそ、生徒に本作の意味を考えさせたい。◉あの朝 失ってから初めて気づく愛慕を描いた現代小説。誰もが経験する喪失や別れについて、新しい意味合いを浮かび上がらせる。現代を生きる女性を主人公とし、生徒も共感を持って読み進めることができる作品。◉檸檬 積み上げた本の群れの上に置いた檸檬がもたらすものは…。この小説が描く「えたいの知れない不吉な塊」に脅かされる心情は、今の高校生にも遠いものではないだろう。◉コンビニの母 都会のコンビニエンスストアを舞台にした、予想外の展開を見せる現代小説。ユーモラスながらも、さまざまな見方・考え方について考えさせられる。◉舞姫 格調高い文体で描かれた近代文学の名作。難読語には丁寧に注を示し、読みやすい工夫をするとともに、当時の雰囲気を伝える図版を数多く示した。・P293 『舞姫』の原稿と初出雑誌・P295 一九世紀末のウンテル・    デン・リンデン・P299 ウンテル・デン・リンデン     のカフェ・P301 一九世紀末のベルリン市    街図・P305 ヴィクトリア座    (一八八〇年当時)・P317 一九世紀後半のペテルブルク・P321 一九世紀末のクロステル街◉葉桜と魔笛 互いを思いやる姉妹による二つの悲しい嘘。渦巻く青春特有の苦悩と恥辱。流れるような見事な文体が紡ぎ出す物語は、現代の若者の恋愛感情に対置してみることで、新鮮なものとして映るだろう。◉蠅 硬質で輝きに満ちた文体が描き出す鮮烈なイメージのあふれる小説。物語としては短いが、そこで描かれる内容や駆使される表現について、さまざまな観点から議論することが可能だろう。単元教材名作者Ⅰ部小説1山月記中島 敦窓いしいしんじ小説2山椒魚井伏鱒二沖縄の手記から田宮虎彦小説3こころ夏目漱石小説4鞄安部公房あの朝角田光代Ⅱ部小説1檸檬梶井基次郎コンビニの母森 絵都小説2舞姫森 鷗外小説3葉桜と魔笛太宰 治蝿横光利一6

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