「新選歴史総合」ダイジェスト版
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263章 国際秩序の変化や大衆化と私たち 現代のように中央銀行が紙し幣へいを発行する制度が成立したのは19世紀前半で,それまでは民間の銀行や各国の政府が独自の紙幣を発行していた。しかし,通貨の価値を安定させるため,イギリスでは1844年にイングランド銀行(中央銀行)が紙幣発行を独どく占せんし,イングランド銀行券と金貨の交換を保証する兌だ換かん制度が確立した。紙幣を金や金貨といつでも交換でき,また金の自由な輸出入が保証された通貨制度のことを金本位制とよぶ。 1870年代には欧米の主要国が次々と金本位制を採用し,国際金本位制が成立した。日本も1897年に金本位制に移行した。世界経済の中心となったイギリスの通貨ポンドが国際的な決けっ済さい通貨,つまり基き軸じく通貨となったのだった。 国際金本位制は1914年の第一次世界大戦までは安定して機能したが,戦争がはじまると,各国は金本位制を停止した。大戦後に再び国際金本位制がめざされたが,1929年にニューヨーク株式市場が暴ぼう落らくすると,金きん融ゆう危機は世界に広がった。1931年9月,急激な金流出に直面したイギリスが金本位制から離り脱だつしたのをきっかけに,国際金本位制は崩ほう壊かいした(日本もこの直後,1931年12月に金本位制を離脱)。各国は自国の経済を守る保護主義的な政策をとったが,それが経済的な対立を加速させることにもなった。 第二次世界大戦後の資本主義諸国は,世界恐きょう慌こうと保護主義政策への反省から,自由貿易体制と安定的な国際通貨体制をめざした。1944年の連合国通貨金融会議(ブレトン・ウッズ会議)では国際通貨基金(IMF)と国際復ふっ興こう開発銀行(世界銀行)の創設が決まり,新たな国際通貨体制であるブレトン・ウッズ体制がはじまった。 IMF協定の加盟国は,自国の通貨の為かわせ替レートをアメリカのドルに対して固定し,それを維い持じしなければならない。一方,ドルだけが金1オンス=35ドルでの兌換を保証し,各国の通貨はこのドルに対して為替相場を維持するので,「金・ドル本位制」ともよばれる。 ブレトン・ウッズ体制は,1960年代にゆらぎはじめた。ベトナム戦争による財政支出拡大の影響などでアメリカのインフレーションが進み,国際収支赤字が増えたことで,ドルの金兌換や固定相場の維持に不安が生じたためである。ついに1971年,アメリカのニクソン大統領が金・ドル兌換の停止を発表すると(ドル・ショック),主要国の通貨も固定相場制から変動相場制に移行した。 現在の通貨は,金や銀といった貴金属によって裏付けられたものではない。それぞれの政府や中央銀行に対する「信用」によって,維持されているのである。➡p.125➡p.1741国際金本位制のしくみ 各国の通貨は一定の重量の金(金貨)と交換できるため,金を基準として通貨間の為かわ替せレートは固定される。歴史のまなざし国際金本位制とブレトン・ウッズ体制~紙のお金に,なぜ価値がある?2ブレトン・ウッズ体制のしくみ金金1オンス=35ドルで兌換各国はドルとの間に固定為替レートを設定金(金貨)兌換ドルポンドフラン円114510152025歴史総合で押さえているから探究の学習もスムーズね。高校生が苦手意識を持ちやすい通貨制度の歴史をわかりやすく説明。日本史探究の学習にも役立ちます。東京書籍『日本史探究』 p.254教科書 p.114つまずきやすいポイントを個別に解説2

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