「新選歴史総合」ダイジェスト版
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222章 近代化と私たち2章 近代化と私たち34 「イスラーム」とはアラビア語で,すべてを神(アッラー)にゆだねることを意味し,イスラーム教徒(ムスリム)は,神の言葉が記された啓けい典てん「クルアーン(コーラン)」などにもとづくイスラーム法(シャリーア)のもとで行動することが求められる。イスラーム法は社会や国家のあり方なども規定しているため,イスラームは,心の救いを求める通常の宗教をこえるものとして理解される。 イスラームは7世紀初しょ頭とう,アラビア半島のメッカで,預よ言げん者しゃムハンマドによりはじまった。彼の死後,同じクライシュ族から選ばれた者が,後こう継けい者しゃである正統なカリフ(代理人)としてイスラーム教徒の共同体(ウンマ)を政治的にまとめた。 第4代のカリフであるアリ―が暗殺され,対立していたムアーウィアがウマイヤ朝を打ち立ててカリフを世せ襲しゅうすると,その権けん威いを認めない勢力があらわれ,シーア派とよばれた。ウマイヤ朝滅亡後はアッバース朝がカリフを世襲するが,やがてみずからカリフを名のる王朝が出現し,ウンマの分ぶん裂れつは決定的となった。アッバース朝では,カリフは統治者としての力をしだいに失い,大アミール(大総そう督とく)とよばれる有力軍人が権力をにぎった。11世紀なかばにバクダードを占せん領りょうしたセルジューク朝は,アッバース朝カリフから「スルタン」の称しょう号ごうを得て,大きな力をもつ権力者となった。 アッバース朝の滅めつ亡ぼう後,カリフはカイロに移り,マムルーク朝の保護を受けた。カリフを立て,メッカとメディナの二つの聖せい地ちを支配することで,マムルーク朝はイスラーム世界の中心としてふるまった。カリフは,政治的実権を失ったあとも理念的にはウンマの指導者であり続けたため,その後は王朝の正当性を示すために使われた。16世紀はじめにマムルーク朝にかわったオスマン帝国の皇帝も,はじめはカリフを名乗らなかったものの,18世紀後半にロシアの圧あっ迫ぱくを受けると,権威づけのためにカリフの称号をもち出すようになる。 イスラーム世界は,華か夷い秩ちつ序じょと同じように,外部の異教徒の世界との関係では,対等なものは想定されなかった。オスマン帝国の外交も,理念的にはその建たて前まえのもとで行われたが,実質的にはヨーロッパの進出を受けて,しだいに勢力を後退させた。19世紀後半,オスマン帝国のアブデュルハミト2世は,パン・イスラーム主義としてイスラームの団結を訴えるなかでカリフの称号を用いたが,十分な成果はなかった。第一次世界大戦後にオスマン帝国は崩ほう壊かいし,トルコ共和国の大統領によって,カリフの称号は廃止された。➡p.32➡p.31イスラーム世界におけるカリフと秩序~ムハンマドの後は,どのように継がれたか前近代の世界3110世紀なかごろのイスラーム世界2カーバ神殿02000kmアラビア海カ ス ピ 海黒 海アラル海地中海コルドバカイロダマスカスバグダードイスファハーンブハラベラサグンサーマッラークーファコンスタンティノープル756~1031750~1258932~1062875~999940ごろ~1132909~1171後ウマイヤ朝ファーティマ朝アッバース朝ブワイフ朝サーマーン朝カラ·ハン朝ビザンツ帝国チュニジア51015202530 タピオカは,キャッサバのデンプンを水に溶かして丸めたものである。このタピオカは日本でも過去に何度かのブームをむかえ,2010年代末にはタピオカミルクティーとして大流行した。 南米原産のキャッサバは,1000年以上前のマヤ文明ですでに栽さい培ばいされていたことが知られている。そのタピオカと私たち1タピオカミルクティーのお店に行列をつくる人々12タピオカミルクティー23キャッサバ 熱帯で栽さい培ばいされ,地中に50cmほどの長い根こん茎けいができる。4タピオカでん粉の地域別生産量(単位:千トン)2013年2014年2015年前年比(増減率)アジア7,6658,0287,958(90.7)▲0.9%タイ4,3004,6704,485(51.1)▲4.0%ベトナム9209801,220(13.9)24.5%南米605598635(7.2)6.1%アフリカ171173177(2.0)2.6%中米・カリブ海222(0.0)0.0%欧州────北米────大洋州₁₁──合計₈︐₄₄₃₈︐₈₀₁₈︐₇₇₁⎝₁₀₀⎠▲₀.₃%5タピオカって明治時代の日本でも食べられていたんですね。ほかに「日本の幕藩体制」や「ヨーロッパの主権国家体制」など,充実の全5テーマです。中学校までの学習ではふれることの少ないイスラーム世界を,わかりやすく解説。身近なものの意外な歴史を楽しくひもとく「暮らしのなかの歴史」。教科書 p.34教科書 p.173多角的な視点を養う,コラムページ4

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