「詳解歴史総合」ダイジェスト版
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近現代の人類社会が直面しているもっとも根本的な問題として,「持続可能な社会」をどのようにして実現し,継続させていくかということがある。持続可能な社会は,一般的に「健全で恵めぐみ豊かな環境が地球規模から身近な地域までにわたって保全されるとともに,それらを通じて国民一人一人が幸せを実感できる生活を享きょう受じゅでき,将来世代にも継けい承しょうすることができる社会」と定義される(2006年4月に閣議決定された「環境基本計画」)。この持続可能な開発・発展という考え方は,ノルウェーのブルントラント首相を委員長とする「環境と開発に関する世界委員会」の1987年の報告書「我々の共通の未来(Our common future)」が提唱した概念である。「将来の世代の欲求を満たしつつ,現在の世代の欲求も満足させる」というこの概念は,開発や発展と環境保全とが両立,共存し得るという考え方である。これまで学習してきた序章から第3章3節までをふまえ,持続可能な社会の実現にはどのような問題があるのか,またその問題は歴史的にどのように形成されてきたのか,そしてその問題は歴史的経験をふまえてどのような解決が考えられるか,といったことについて,自ら課題を設定して考え,探究してみよう。持続可能な社会をどのように実現するのか工業化の進展のなかで,私たちの生活環境は便利になったが,他方で自然破壊が進み,大気汚お染せんなどの環境破壊の問題が生じた。それに対して,法や制度,企業や社会の努力もあり,おもに先進国では,環境問題を解決する試みもなされてきた。それは一定の成果をあげたが,地球温暖化などの問題は一層深刻化している。これらは第1章4節や第2章4節で学んできた通りである。■1はこの1,000年間の地球の気温の変化を示したグラフである。ここから何が読み取れるだろうか。特にこの教科書で学んだ19世紀から現在までの時期は,地球の気温の長期的なサイクルにおいてどのような時代といえるのだろうか。地球温暖化は,太陽の活動などの自然現象だけで決まるわけではない。温室効果ガスもその一因である。温室効果ガスは,日常生活や工場などから排出される二酸化炭素などから構成されている。では,温室効果ガスの排出を抑制していくにはどうすればよいのだろうか。このような問題を扱う国際会議での交渉は困難をきわめることが多いが,なぜこの問題は解決が難しいのだろうか。そこにはどのような対立点があるのだろうか。この問いに関して,自らの疑問点をもとに主題開発・保全――地球環境の問題➡p.89➡p.156■11000年から2000年の気温変化1.00.50-0.5-1.0(℃)10001200130014001500160017001800190011002000年※縦軸は,1961~1990年の平均気温を0℃とした気温偏差を表す。※太線は計測機器によるデータ,細線は複数の気候代替データを元に復元した研究データMBH1999JBB,,1998DWJ2006MJ2003ECS2002HCA,,2006BOS,,2001RMO,,2005O2005B2000MSH,,2005計測機器(HadCRUT2v)4節 現代的な諸課題の形成と展望210 第3章 4節 現代的な諸課題の形成と展望を設定して,自分なりの答たとえば,手がかりとし炭素排出国について確認しをふまえて考察してみよういが温室効果ガスなどの環にどのような影響を与えて個々の国や地域の経済発展特質がある。その特質と温問題への取り組み方にはどだろうか。■3のグラフから,世界の増加傾向が続くと考えられが顕けん著ちょな国は変化し,一定は,■4からわかるように,平等・格差――人口問題■3世界の人口(上)と主要国の人口195060708090200120100604020800(億人)ヨーロッパ中南米188106421214160(億人)195060708090200アメリカ中国インドネシア持続可能な社会の実現のためにどのような取り組みが必要になってくるのか,「歴史総合」を学ぶ高校生に考えてもらいたいテーマを広く提示しました。カラーユニバーサルデザイン(CUD)対応。グラフや地図には,色覚特性に対応した色の組み合わせを採用。18Point 2 資料をもとに近現代史を「考える」❷ 自ら探究していく力を育てる

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