本校は,平成21年度より「生きる力を育む小学校英語の創造 ~英語が話せる本宿っ子をめざして~ 」を主題として研究の一歩を踏み出しました。平成 23 年度には,岡崎市教育委員会研究委嘱三年次の全国に向けた小学校英語活動授業研究協議会を開催しました。平成 24 年度からは,自主発表として英語活動授業研究協議会を開催し授業公開を継続しています。また,岡崎市は,平成 22 年度から文部科学省から特例校の指定を受け,全小学校で岡崎市自作の英語 DVD 教材「OK English」の視聴を継続してきました。1年生から6年生用の DVD 教材が全小学校に配布されています。岡崎市内のどの小学校でも 45 分の授業を5日分に分け,毎日8分間の DVD 視聴を行い,週1時間分の英語活動を行うという取り組みです。本校では「Eタイム」と名付け,毎朝第1時始業前に行っています。この実践によって,どの学校においても同じように英語活動の学習に取り組むことができるという利点があり,英語活動の学習の基礎を支える大切な時間となっています。
本校の英語活動の授業は,全学年において担任,ALT,ST(サポートティーチャー)の三者で行うAll English の授業を行っています。担任が本宿小カリキュラムを基に立案した授業を提案し,ALT,ST とともに協同で授業を行います。また,1時間の授業は「Warm-up」「Review」「Activity」「Main Activity」の4段階で進めていきます。担任はクラスルームイングリッシュを使って授業を進め,モデルダイアローグも一緒に行います。担任は,英語を話そうとするモデルとしての役割も果たしています。ST は,ALT と担任のコミュニケーションの支援や,個別指導の補助などを行っています。ALT,ST と一緒に授業を行うことで,担任も安心して授業を進めることができます。
こうした本校の英語活動の授業も一歩一歩ではありますが,下記のように毎年進化をしてきました。
平成 23 年度
All English
10 往復対話
3 人の授業分担の明確化
評価カード
他教科とのリンク
平成 24 年度
Communication Point の明確化
Clear voice,Eye contact,
Response,Listen,Gesture,
Smile
平成 25 年度
自分の思いを
伝える活動の
レベルアップ
平成 26 年度
文字指導の段階的な導入
英語を使う必然性
のある活動の導入
<定型からの脱却>
平成 23 年度では,10 往復の対話を進化のポイントの一つとして,対話の数でコミュニケーションの姿を高めました。平成 24 年度にはコミュニケーションポイントを明確化しました。平成 25 年度からは,「コ」の字型対話を導入し,また,使用表現に形容詞を追加して自分の思いを伝える活動をレベルアップさせてきました。そして,本年度は,6年生において英語を使う必然性のある活動を導入し,子供たちが,6年間学んできた英語を活用する授業実践に取り組みました。本校には,大学が隣接しており,総合的な学習や学校行事等で交流してきました。この大学にはアジアからの留学生が在籍していることから,英語活動での交流に取り組みました。「私たちの町について話そう」“Let’s talk about our town.”という単元を構成し学習を進めました。この学習を進めるにあたっては,本校の定型の授業形態ではなく,「フリートーク」の授業形態を導入しました。その単元計画や展開について紹介します。
(1)目 標
①相手意識をもって,自分の住んでいる町のことを伝えたり,相手のことについて尋ねたりしよう とする。(コミュニケーションへの関心・意欲・態度)
②話を広げていく“How about you?”“Do you know~”等の表現に慣れ親しむ。(外国語への慣れ親しみ)
③世界にはそれぞれの代表文化や観光名所があることに気づく。(言語や文化に関する気付き)
(2)単元構想 <略>
(3)指導計画
時間 | 学 習 活 動 と 使 用 表 現 | 教 師 の 手 立 て | 主な評価 | ||
---|---|---|---|---|---|
コ | 慣 | 気 | |||
1 |
・岡崎(本宿)で有名なものを紹介するときの言い方を知る。 |
・岡崎市には有名な場所や物がたくさんあることに気付かせるために,今まで経験してきた遠足や給食のメニューのことを思い出させる場を設定する。 |
○ |
||
3 |
・自己紹介や岡崎(本宿)の有名なものを紹介する。 |
・相手に自分の町についてわかりやすく伝えるために,絵や写真・実物などを総合的な学習の時間を利用し,準備させておく。 |
○ |
○ |
|
1 |
・6グループに分かれて,既習表現を用 いて留学生とフリートークをする。 (本時) |
・相手の言葉をよく聞いて自然なコミュ ニケーションができるように,ALT, ST,担任が児童と一緒に円の中に入 り,フリートークのモデルとなる。 |
○ |
(4)展 開
段階 |
児 童 の 活 動 |
教 師 の 活 動(○担任 ●ALT,ST) |
---|---|---|
Warm 5 |
1 歌を歌い,あいさつをする。 |
○“Let’s start English class.” |
Main Activity 45 |
2 学習課題を知る。 Let’s talk about our town and ask questions to foreign students. 3 留学生の簡単な自己紹介を聞く。 4 ALTと担任によるスピーチを聞く。 5 6つのグループに分かれて,留学生とフリートークをする。 ・写真を見せながら岡崎や本宿のことについて紹介する。 ・紹介後に留学生に質問する。 A: My name is ~. Cherry blossoms are popular in Japan. Okazaki is famous for cherry blossoms. It’s beautiful. B: My name is ~. Okazaki is famous for Hatcho miso. It’s yummy. Do you know Hatcho miso? C: My name is ~. Okazaki is famous for fireworks show. It’s exciting. Do you like fireworks? D: My name is ~. Motojuku is famous for fireflies. They’re beautiful. Many fireflies are in Obata. Here is a picture. Do you want to go to Obata? ・留学生が出題するクイズに答える。 (写真を見せながら)What’s this? It’s famous for ~. ・テーマカードを手掛かりにして,留学生と自由に対話をする。 ・聞き取った情報をホワイトボードに記入する。 6 授業の振り返りをする。 ・留学生にお礼を言い,握手をする。 ・振り返りカードに記入する。 7 歌を歌い,あいさつをする。 “OB-LA-DI, OB-LA-DA” |
○“Today’s goal is this.” Let’s talk about our town and ask questions to foreign students ●ALTが学習課題を読む。 ○各グループのリーダーが留学生を迎えに来るように指示する。 ○“Let’s talk about our town and let’s ask foreign students.” ○“Today’s communication points are Clear voice and Response.” ○コミュニケーションポイントカードを黒板に貼る。 ○●ALT,ST,担任はグループを回り,フリートークのモデルとなったり支援をしたりする。 ○●控えめな児童も留学生と話ができるようにペアの児童が“How about you?”と会話に参加できるように支援する。 ●言い方がわからない児童が“How do you say ~ in English?”と尋ねてきたら,その支援をする。 ○●相手の言葉に対して,反応している児童を称賛する。 ○時間がきたら児童はその場に残り,留学生がⅠ→Ⅱ,Ⅱ→Ⅲ…Ⅵ→Ⅰというように移動するように指示する。 ○“Shake hands with foreign students and say Thank you.” ○“Check your cards.” ○“That’s all for today.” ○“Let’s sing a song.” ○●児童と一緒に歌い,明るく元気にあいさつをする。 |
(5)評 価
・はっきりした声で自分の町のことを伝えたり,留学生の話をよく聞いて,積極的に質問したり,反応したりしようとしたか。
(活動5より)
「私たちの町について話そう」の授業は,6年生の子供たちと留学生とのよい出会いとなり,外国人とのコミュニケーションを高めるすばらしい体験となりました。前述の授業を行ったのは,10 月 29 日の授業研究協議会当日であったため教室内に大変多くの参観者が入り,子供たちはとても緊張していました。そのため,思うように留学生との会話ができなかったと反省する子供も少なからずいました。しかし,写真やテーマカードを使ったり,聞き取ったことをホワイトボードに記入したりするなどの手立てによって積極的に会話をすることができたと感じています。また,これまで学習してきた定型の英文だけを使うのではなく,習った単語や知っている単語などを使ってコミュニケーションを図ろうとする子供たちの姿がたくさん見られました。留学生の皆さんには,自ら話しかけることをできるだけ控えていただくようにお願いし,子供たちからの質問を優先して会話を進めていくことができるようにしてありました。そのことからも,子供たちの「聞きたい」「伝えたい」という意欲が高まっていたことを実感しました。相手に質問したいがどのように話したらよいか分からないときには,“How do you say~in English?”と ALT や ST に尋ね,支援してもらったことも,子供たちの活動への大きな支援となりました。11 月に行った修学旅行では,2学級 64 人の子供たち全員が,京都や奈良の観光地で出会った様々な国の外国人と積極的に会話をし,記念撮影をしてくることができました。この単元の学習の成果が表れたものと思います。
2020 年,小学校の英語の教科化が始まります。本校においても,教科化に向けた活動の導入を始めました。3年生以上で文字に関する授業単元を入れたり,6年生でアルファベットを書くことを帯学習で無理のないように行ったりしています。低学年では英語の絵本の読み聞かせを積極的に取り入れています。平成27 年度は,本校のこれまでの歩みを総括し,全職員で力を合わせ「進化するMotojuku English」を合言葉に,さらなる進化をめざして研究を進めていきたいと思います。