昨年,千葉大学附属小学校 3 年生の英語の授業を実践する機会を得ました。授業は,週に 1 回 20 分というペースで行われました。そこで試みられた多くの取り組みは,高学年での指導にも通ずるものがありますので,幾つかをご紹介したいと思います。今回は,Today Is Monday という絵本を使った活動展開を事例に使用します。
著名な絵本作家 Eric Carle による一冊です。月曜日はあれを食べて,火曜日にはこれを食べて…と日替わりの料理が様々な動物と一緒に登場します。Carle 氏独特の色使いと大胆な紙面の構成で,本を開くたびに楽しい気分になります。また,本文が歌詞で構成されているため,最後についている楽譜に合わせて歌いながらページをめくることができます。
絵本に登場する料理は,string beans(さやいんげん), spaghetti(スパゲッティ), ZOOOOP(ズープ…「スープ」のこと(筆者の造語)), roast beef(ローストビーフ), fresh fish(新鮮な魚), chicken (チキン), そして ice cream (アイスクリーム)。たくさんのメニューが並んでいます。同じ英語表現が繰り返され,そのことが絵本にリズムを作ります。ページをめくるたびに,見開きのページいっぱいに描かれる動物が異なるところも,児童の興味をくすぐります。
今回は,この絵本を使用して「料理の名前に親しむ,そして,英語のリズムを楽しむ」というねらいを定めました。このねらいに基づいて,3 回の授業案を組みました。初回ではまず絵本を読むこと,2 回目は料理の名前に注目しながら,話の内容を復習すること,3 回目は料理の名前を繰り返すことによって記憶に定着させること,にしました。
本項では,絵本に関連した活動に焦点を絞り(初めの挨拶,終わりの挨拶などは割愛),3 回の授業の流れを記します。先の「料理の名前に親しむ,そして,英語のリズムを楽しむ」というねらいをどのような活動で具現化したのかを説明します。
活動の流れ | 活動の詳細 |
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(1)絵本を読む |
Today Is Monday を読む。 |
(2)質問する |
絵本に出てきた料理の好き嫌いを児童に尋ねる(Do you like string beans?)。最初は英語でクラス全体に投げかけ,好きという児童に挙手させる。その後,1,2 名 を指名し,同じ質問に “Yes, (I do.)”, “No, (I don’t.)” で答えさせる。 |
活動の流れ | 活動の詳細 |
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(1)絵本の復習 |
Today Is Monday の歌を歌いながら,ページをめくり,話の内容を復習する。 |
(2)ジェスチャーの考案 |
黒板に貼った7枚の料理カードを話の順に並べ,それぞれの料理に合ったジェスチャーをクラス全員に質問し,アイデアのある児童に答えさせる。 |
活動の流れ | 活動の詳細 |
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(1)絵本の復習 |
Today Is Monday の歌に,前回の授業で取り上げたジェスチャーをつけながら絵本を復習する。 |
(2)料理のグループ分け |
7種類の料理を 2 グループに分けて黒板に貼り,どういう理由でグループ分けされたのかを児に尋ねる。 (1) ice cream vs. string beans, spaghetti, zoooop, roast beef, fresh fish, chicken |
今回の実践では,Today Is Monday という 1 冊の絵本を 3 回の授業で使用しました。この話は,英文が比較的短く,同じ構文を繰り返しながら話を構成する patterned book と呼ばれる一冊です。同一文の繰り返しが児童の理解を促進させるとの想定に基づき,原文のまま読みました。また,意味の理解を助けるわかりやすい絵を 1 ページずつ丁寧に見せながら,絵本を読むことを心がけました。絵本の内容は,補足的説明を加えなくても,そのまま児童に理解されたようです。第 2 時以降,復習として本を読むと,児童が私より先に料理名を口にすることが頻繁にありました。そのようなときには“ice cream”,“fresh fish”のような英語ではなく,「アイスクリーム」とカタカナの発音であったり,「さかな」と日本語を用いたりしての回答だったので,その都度,該当する英語表現を提示しました。
歌のある絵本は,今回初めて使用しました。メロディが歌詞を記憶する(あるいは思い出す)助けになっている様子が随所に見受けられました。“Today is Sunday. Today is Sunday. Sunday-ice cream. All you hungry children, come and eat it up.”という歌詞の下線部は長く,難しい文構造ですので,この部分はなかなか児童の口をついて出てきませんでしたが,少なくとも英語のリズムに乗って,タイミングよくジェスチャーをする様子が印象的でした。
自分たちでジェスチャーを考える活動は,児童がとても熱心に取り組みました。3 年生という発達段階に合っていたためか,どのクラスにおいてもほぼ全員の児童が手を挙げて,思い思いのジェスチャーを披露しました。また,クラスによって出てくるジェスチャーが異なるのも意外でした。例えば,chicken では鶏のように羽根をバタバタさせる動作をするクラスがあれば,骨の付いた肉の塊にかぶりつく動作をするクラスもありました。
第 3 時で扱った料理のグループ分けをする活動は,複数の単語があれば始められる便利な活動です。教師は target language となる単語を連呼するだけでよく,難しい説明は不要です。なぜなら,英語が難しくなると思われる「何が単語を2グループに分けるのか」という部分は児童に考えてもらうことになりますので,活動の説明に時間を取られたり,それが難しすぎて児童に負荷がかかってしまうという問題を回避できます。どの組も 3 番目の質問(担任の好きな料理,そうでない料理)は,なかなか正解が出ませんでした。その結果,教師は 2 グループの構成を確認するために単語を繰り返し発話することになり (Ice cream is in Group A. String beans are in Group B.) ,児童は自然に英語のインプットを増やすことができました。こういった活動の蓄えが多くなると,授業の準備が単純化され容易になるであろうと想定されます。