直島町教育委員会濵中 紀子

校内での教員研修なくして指導力は高まりません

 小学校における英語教育の早期化,教科化に向けて授業時間やカリキュラムなど,整えていかなければならないことはたくさんあると思われます。教員研修もその一つです。リーダー研修や中核教員研修等が実施されていますが,せっかく得た知見を広げていく十分な校内研修を組織できないという例が多く聞こえてきます。しかし,全ての教員に伝達するためには校内研修が必要です。何より,創意工夫しながら実践に重きを置いた校内研修を行うことが,教員の指導力を高め,ポジティブな学校組織を作っていくと考えます。

 私も20年余り,英語教育を継続実践していく担当者として,どのようにすれば教職員の意識を高めていくことができるかとずっと考えてきました。一つの事例として,これまで行ってきた直島町立直島小学校での教員研修を紹介します。

図1 直島小学校の外国語に関連した日課表
図1 直島小学校の外国語に関連した日課表

 まず,研修の時間を確保するために,上の表のように,外国語の授業,ALTとのミーティング,短時間学習,教員研修など,外国語に関することは全て日課表に組み込みました(図1)

 全員そろっての研修は水曜日,または木曜日の放課後になります。研究授業の時は,5校時から開始しますが,それ以外は,30分程度の研修です。短時間でもねらいを持って行うために,研修内容を大きく4つに分けて名前を付けました。すると,「今日は・・・の研修」と意識して取り組めるようになりました。

「全体会」

 これは,講演や研究授業後の討議などを通して,小学校における英語教育の考え方を共通理解していく研修です。夏休み中の研修では,「児童がどのような人に育って欲しいのか。」「外国語を学ぶことでどのような力が育つのか。」といったことを自由に話し合って交流する研修もしました。
 このような話し合いは,外国語を学ぶことが,全人教育としての小学校教育にどのようにかかわるのかを考えるよい機会となります(図2)

図2 話し合ったことを伝え合う
図2 話し合ったことを伝え合う

「Plan研修」

 これは,毎月1回行います。次の月の単元について,そのねらいや言語活動,教材等を確認したり準備したりします。また,前年度の授業の様子を映像で見ることで,授業のイメージをもちます。

図3 学年ごとの教材の棚
図3 学年ごとの教材の棚

図4 単元ごとの教材
図4 単元ごとの教材

 このPlan研修のためには,日頃から各学年のそれぞれの単元の教材を,「いつでも」「誰でも」「すぐ使える」ように整理していくことが大切です(図3,4)

「Pre研修」

 これは,模擬授業を通した研修です。全学年が一回は研究授業をすることにしていますので,その事前授業として,紙面上ではなく,実際に児童役になって模擬授業をして,改善策を話し合います。
 例えば,「電話で友達を遊びにさそおう」では,二人の間にダンボールを立てて場面を作ることや声が通るように下に穴をあけるなど,教具のアイデアが次々と出てきました(図5)
 また,「楽しいスポーツ」では,I play …. I do ….の使い方の違いや,日本語との語順の違いをどのように児童に気付かせるかが話題になりました。国語でも外国語でも,普段から主語と動詞を色分けして提示することで気付きを促そうと共通理解しました(図6)

図5 言語活動を体験する
図5 言語活動を体験する

図6 実際の場面で話し合う
図6 実際の場面で話し合う

 授業者は,このPre研修の後に再度模擬授業をするなど,熱心に取り組んでいます。研究授業までの過程に参加することで,授業者だけでなく他の教員も共に学んでいることがよく分かります。模擬授業を通した研修は,小学校教員がもつ豊かな発想力を生かすことができます。また,児童役を担うことで,自ら体験して学ぶことになり,外国語への苦手意識も減っていきます。

「REACT :Really Easy Azalea Chatting Time」(azaleaは直島町花)

 これは,水曜日の放課後に実施している教員自身の英語力向上のための研修です。自由参加ですが,多くの教員が楽しく参加しています。ALTと会話をしたり,クラスルームイングリッシュを練習したり,英語の歌を歌ったりします。また,全校集会等の出し物として英語劇を練習したり(図7),家庭科室でALTに説明しながらいっしょに調理をしたりする研修も行います。教員自身が英語を使って何かをすることで,伝え合う楽しさや連帯感,達成感を感じ取っているようです。

図7 教員による英語劇
図7 教員による英語劇

 以上のように時間を確保して研修をすることができればよいのですが,外国語の研修ばかりに十分な時間が取れるわけではありません。そこで,教員自身の英語力向上につながるように,学校の日常生活の中に英語を聞いたり使ったりする場を取り入れています。

○ALTとのミーティング時間
 時間割上にミーティング時間を設定することで,ALTと定期的にミーティングを行うことになり,そのこと自体が研修の場となっています。

○自己研修の教材
 文部科学省が配布した「小学校外国語活動研修ガイドブック」やHi, friends!の指導書(指導表現学習CD -東京書籍-)にあるクラスルームイングリッシュなどの音声CDを配って,自己研修に使っていただきます。車の中や家庭で聞くことができるという自由度と安心感があります。

○会議などの進行で発話練習
 直島小学校では職員終礼や職員会の進行を英語で行っています。驚かれるかもしれませんが,“Stand up please. Good morning. It's 曜日,月,日. Are there any announcements? …”のような決まり文句を英語で言うだけのことです。しかし,これでも,みんなの前で英語を話す経験になります。

○「すきまEnglish」活用
 職員室の机上にクラスルームイングリッシュのプリントをラミネートしたものを置いてもらいます。職員終礼や職員会の後に3~5分の練習時間を取り,声に出して言ってみたり,隣の先生とチェックし合ったりします。短時間ですが,楽しそうな声が広がります。すぐ取り出せるところにあると,ちょっとしたすき間の時間を使って研修することができ,先生方の負担が少なくなります。

○学びの記録「Super English Note」
 これは,それぞれの教員の自分の記録のために配っている普通のノートです。担任は何よりも定期的に行う外国語(活動)の時間で学んでいることがたくさんあります。授業中にALTが使った英語や教えてもらった表現などを書きためていくためのノートです。

○校内放送
 給食時に,校内放送でその月の題材に関連する英語の歌を流しています。児童だけでなく教員もいっしょに聞いて英語に親しんでいきます。

○短時間学習
 直島小学校では,5校時前の5分間をEnglish Timeとして,全校一斉の短時間学習を行っています。自作CDを使ってスタートしましたが,現在は,Picture Dictionary(Longman出版)を使って語彙を増やすことを目的にして実施しています。それぞれのページを5分以内に編集しているCDを使って単語やチャンツを言います。ここでは担任も児童といっしょに英語に触れていくので,一つの教員研修と捉えています。

 このように,校内研修の方法はいろいろ考えられます。それぞれの学校の実情に合わせて,全教員が参加できる校内研修を組んでいくことが大切だと思います。3年生からの外国語活動も,5年生からの教科外国語も,ほとんどの教員が体験したことがないことが始まるのですから,校内研修で一丸となって取り組んでいく体制作りをしたいものです。

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