沖縄県 小学校教諭平良 優

英語が苦手な小学校教員の外国語活動奮闘記②
~小学校に英語がやってきた~

平成21年4月1日,新年度の業務がスタートした。

初会議の校長の言葉。

「本年度,本校は文部科学省指定の研究校です。全職員が外国語活動に対応できる授業力を身につけることを目指します。」

―――― と,端的に話は終了。  
 
そして,翌日は,なんと!指導主事を要請しての校内研修であった。

動きが速い!

こんな時期に校内研修なんて,これまでなかったことだ。

校長の想いは次の通り。

「不安が大きくなると不満に変わることがあります。よって,いち早く不安を解消するために,年度開始二日目ですが,校内研修をします。」

と,これまたきっぱり!

なんだかかっこいい。さすが,経営者である!

そして,初の校内研修がスタートした。

内容は,指導主事と英語授業アドバイザーの TTに よる模擬授業である。

指導主事は担任役,英語授業アドバイザーは ALT 役。

ALT 役の号令で模擬授業がはじまった。

担任役はというと,もじもじと困った様子の演技。

・・・かと思えば,教室後方で ALT 役の授業の様子を,他人事のように眺め始める。

ALT 役の進行でスムーズに授業は流れ,いくつかのゲームをして授業は終了した。

模擬授業後のやりとり。

指導主事  「どうでしたか。私のクラスの授業は?」

職員  「担任が,なにもしていませんでした!」

職員  「えっ?,では,担任はどんなことをしたらいいのですか?」

  ――― さすがの問い返し!

それに反応し,職員が学級担任の役割について考えを挙げていった。

・ 机間指導をするならともかく,教室後方から授業を眺めているのはまずい。
・ 授業の流れを知っているのだから,授業の進行はしたほうがいい。
・ 英語が苦手だからと言っても,挨拶や単語のリピートぐらいは,英語でできる。

指導主事  「ゲームの説明はどうですか?」

職員 「児童の理解を助けるために, ALT の説明を担任はジャスチャーで表現したり, ALT に『もっとゆっくり』『もう一度』などをお願いしたりはできる。」

職員  「 ALTと二人でゲームのデモをした方が具体的に分かる。」

なるほど! さすが本校職員!!!

そして,次の展開は ―――

指導主事  「分かりました。では,私がその役割をしてもう一度模擬授業をします。」

すごい! 神様のような指導主事である。

そして,再度,模擬授業がスタート。

模擬授業が終わると,職員から割れんばかりの拍手喝采であった。

「外国語活動って,こんな感じなんだ!」

なんとも,ものすごく体験的な研修であった。

この研修会を終え,熱の冷めないうちに授業づくりをスタート!

・・・と言いたいところだが,始業式に向けて,かなり多くの準備がある。

さらには,新入生の教室準備から,入学式の準備まで。

合間を縫いながら,なんとか教材研究。

なんやかんやで,新しい学級がスタートし,いよいよ外国語活動の授業!

ALT と TT で,なんとか授業を進めていく。

進行は担任! そして,できるだけ教室英語を使う。

「キーワードゲーム」

「ミッシングゲーム」

「フルーツバスケット型ゲーム」

と,ゲーム,ゲームが続く。

授業後,子供のふり返りカードを見ると,

「今日の授業もたくさんのゲームができて楽しかったです。」

と,授業を楽しんでいる様子が伺える。

安心! 安心! である。

「なんだぁ,外国語活動って,簡単じゃん!」と思い上がってきた。

週に1回の外国語活動の授業を子供たちは楽しみにしている。

それに応えるかのように,新たなゲームで授業実践をする。

子供の感想は,もちろん「楽しかったです!」のオンパレード。

そんな授業実践が二ヶ月,三ヶ月,・・・・と続いていった。

ある日,職員に,「外国語活動の授業は,どんな感じですか?」と尋ねた。

すると,「簡単だよ。あれって,お楽しみ会でしょ。子供たち楽しんでいるよ!」

・・・・・ん????? なんだか腑に落ちない。

外国語活動って, お楽しみ会と同じなのか?

英語を使ったゲームをするだけで本当にいいのか?

―――― ここから本当の授業研究が始まった。

「このゲームをすることで, 子供にどんな力がつくのか?」

「複数のゲームの順序性の意図はなんなのか?」

つけたい力の明確化と,意図的な授業の組み立てを図っていった。

授業が変わると,子供の感想が変わった。

「今日は,キーワードゲームをして,いろいろなスポーツを英語で言えるようになってきました。」

この感想,一見すると普通である。

しかし,これまでの「ゲームをして楽しかったです。」と比べると,明らかに質が違う。

ゲームを通して,できるようになってきたことを,子供自身が自覚しているのである。

担任が「つけたい力の明確化」を図ることにより,子供は「学びの自覚化」を図った。

これって,すごいことかも!

・・・・・・と,このように, 平成21年度は, 相変わらず, ゲーム, ゲームの授業であったが,

「つけたい力」をキーワードに, 授業づくりが行われていった。

その後, 平成23年度, 24年度・・・と, 実践は膨らみ,

「活動の必然性」

「他教科との関連」

「言葉への気づき」

と, 楽しいだけの授業からの脱却を図っていった。

その具体は!  ・・・・ 次回からお伝えいたします。

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