道徳授業,こうすればできる!

比治山大学准教授 森川 敦子

話し合いを盛り上げる裏技 ~「考え,議論する道徳」授業の基盤づくり~

 道徳の教科化に伴って,「考え,議論する道徳」など,道徳授業の質的転換が求められている。ねらいに深く迫る主体的な学びを生み出すためにも,話し合い活動は是非とも大切にしたい。
 しかし,先生方の悩みも多い。学級全体では「発表が一部の児童に偏ってしまい学級全体の話し合いにならない」,「発表内容がほぼ同じで話し合いが活性化しない」,また,ペアやグループ活動では,「活動そのものがうまくいかない」「グループ活動は時間がかかり,ねらいに深く迫り切れない」などの声も多く寄せられている。
 ここでは,話し合いを盛り上げるための裏技を3つの視点から紹介する。

【話し合いを盛り上げるための裏技】

◯互いに学び合える支持的風土の醸成【学級づくり】

◯話し合いの手順や方法の共有【話し合いにおける方法的視点】

◯話し合いたいと思えるテーマの設定【話し合いにおける内容的視点】

1 互いに学び合える支持的風土の醸成【学級づくり】

 道徳授業では,自分の道徳観や生活実態を振り返り,発表したり交流したりする場面 が多い。したがって,まずは,自分の考えをしっかりと聞いてもらえ,学び合えるような支持的風土の醸成が必要である。教師は折に触れ,次の点を繰り返し伝える必要がある。

・道徳授業は自己を振り返り,よりよい生き方についてみんなで考え合うための時間。

・多様な意見が出されることによってこそ学びが深まる。

・自分と違う考えは,自分の見方を広げるもとになる宝物。

・正解は一つとは限らない。大人でも判断が難しい問題もある。

・一人一人が真剣に考えた意見は大切に。決してばかにしたりからかったりしない。

2 話し合いの手順・方法等の共有【方法的視点】

 話し合いを盛り上げるためには,話し合いの「形・型」を児童生徒が共有しておくことも大切である。その日の話し合い方が共有できていれば,話し合いもより効果的なものになるだろう。話し合う手順や方法については,実態に応じて次のような事柄を段階的に指導するとよい。それらが定着するまでは,必要事項を学級に掲示しておくのも有効である。

話し方聞き方のルール:ひやかさない,ばかにしない,話を遮らないなどの聞き方や,皆の方を向いて,最後まではっきりと,事実と意見を分けて,理由や根拠を明確にしてなどの話し方についてルールを確認する。

役割分担:司会,記録,タイムキーパーなど,グループや学級全体で話し合う際の役割分担を確認しておく。

話型:前の人の意見に賛成の場合,反対の場合,付け加えがある場合,違う視点からの意見の場合などについての話型や言い方の例を示しておく。

席の配置:話し合いを盛り上げるためには,一斉授業(講義)型よりも,コの字型,対面型(反対派賛成派),4~6人毎のグループ型,ペア型等の配置の方が有効な場合も多い。発達段階や話し合いのテーマに合わせて席の配置も工夫するとよい。

3 話し合いたいと思えるテーマの設定【内容的視点】

 話し合いを盛り上げるためには,何を話し合うか,つまり話し合いに夢中になるようなテーマを設定することが重要である。話し合いの時間を確保する為に,発問を精選するとともに,主要発問では,教師自身も夢中になれるようなテーマを考えてみるとよい。

◯賛否両論等,意見が分かれそうなテーマ

例)子どもが手伝いをして,親から小遣いをもらうことに賛成?反対?

例)ロレンゾにとって,3人のうちの誰が一番よい友達だと考えますか?

⇒理由を話し合わせ吟味させることによって道徳的価値やねらいに迫らせる。

◯意見が1つではなく多様に考えられるテーマ

例)ロベーヌがおじいさんから受け取った贈り物とは何だと思いますか?

⇒多様な視点から意見を出させると共にそれらを類型化してまとめさせたりその中で最も価値があるものを吟味させたり順位付けさせたりするとよい。

◯児童生徒が疑問に思うこと,考えてみたいと思うテーマ

⇒教材文や登場人物について,児童生徒が気になること,わからないこと,考えてみたいことなどの学習課題を設定し,それについて話し合わせる。

 話し合いが上手になるにはそれなりの時間はかかるもの。「ローマは一日にして成らず」である。まずやり易いことから始め,焦らず,諦めずに実践を重ねていくことが大切である。

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