道徳授業,こうすればできる!

比治山大学准教授 森川 敦子

子どもの心にささる魅力的な終末例!

1 終末の必要性と役割

 「道徳授業の終末はどうすればよいものになりますか?」「子どもの心にささるよい説話や終末の方法はありませんか?」これらも私が指導主事時代に,先生方から多く受けた質問である。終末は導入と同様に指導過程の一つで,授業のまとめの段階である。
 終末には,下のような“内面化”と“実践化”を促す役割があり,発展性をもたせながら授業を締めくくるための重要な要素である。

〇 本時の学習を通して感じたことや道徳的価値について考えたことを子どもたち自身がじっくりと整理し,自分の中に深く落とし込む。(内面化)

〇 学んだことをもとに,「やってみたい」「実践してみよう」という道徳的な実践意欲を高める。(実践化)

2 魅力的な終末とは ~ある説話のエピソードより~

 小学校教諭時代には,私自身なかなか効果的な終末ができずに苦労したものである。ある時,授業を参観してくださった指導主事の方から「教材が霞むくらい力のある,子どもたちの心にささった終末(説話)でしたね。終末のもつ力を実感した授業でした」と言われたことがある。正直・勇気をテーマとした授業で,私がした説話は今でも悔やまれる小学校時代の失敗談。「子どもたちには自分のような後悔はしてほしくない」そういう思いで準備した説話であった。十年以上たった今でも,話した内容や教室の張りつめた空気,子どもたちの真剣なまなざしは忘れられない。授業後には子どもたちがその話についていろいろと聞きに来たこともはっきりと思い出される。
 むろん,教材と切り離してそのエピソードだけを子どもに語ったとしても,そのような空気にはならなかったであろう。教材と子どもたちの実態,授業の流れと説話の内容がうまくマッチしたからこそ得られた効果だったと思う。
 子どもの実態や授業の流れに沿った終末は,子どもたちの心に深くささり,授業をさらによい方向に発展させてくれる。様々な方法を試しながら,子どもの心にささる魅力的な終末のバリエーションを増やしていってほしい。

3 明日から試してみたくなる!終末例いろいろ!

【道徳授業でよく使われる終末例】

説話(教師やゲストティーチャー),授業の感想,日記,作文,エピソード,手紙,詩,絵,俳句,標語,格言,ことわざ,新聞記事,音楽,歌,VTR,私たちの道徳など

【終末づくりワンポイントアドバイス】

〇 余韻を大切にし,授業に発展性が出るようにする。

〇 その日の授業の流れを踏まえて終末の比重を調整する。終末までにねらいに深く迫っている授業では軽めに,迫り方が浅い時には少し重めになど,臨機応変に調整する。

〇 教師の説話や子どものエピソードなど,個人の経験を紹介する場合には,事前に管理職や先輩,同僚の先生方に聞いていただき,内容が適切か複数の目で確認しておく。

【おすすめの終末例】

教師の説話:子どもは教師の経験談を聞くのが大好き。説話が授業の流れや子どもの実態に合っていれば大変効果的である。

子どものエピソード:子どもたちの素敵なエピソードを教師が紹介する。身近な実話であるため,説得力がある。また,自分たちの素敵な姿を見せることは,何よりも子どもたちの実践意欲を高める。例えば,係活動や掃除など子どもたちが普段頑張っている写真やVTRをBGMとともに提示するとドラマティックな終末となる。

授業の感想や気付き:学習の中でハッとした意見,なるほどと思った友達の意見やその理由などを交流し合うような終末もおすすめである。このような終末を行っていると,子どもは自然と友達の意見に耳を傾けるようになる。子ども同士が学び合う学級風土を醸成したり子どもの自己肯定感を高めたりするのにも大変効果的な方法である。

今日の学びをキーワードで紹介:学びをキーワードにすることそのものが主体的な学習のまとめになる。似たワードが出ると子ども同士の共感にもつながる。また,オリジナルの俳句や格言,標語などにすると学級掲示にも活用できる。

:授業のテーマや価値に関連する詩を配付し教師が範読したりスライドショーで提示したりする。オシャレなBGMとともに大型TVで映したりするのも効果的である。

歌や音楽:皆で一緒に歌を歌う方法や歌詞を読みながら曲を聴く方法,目を閉じて曲を聴きながら終わる方法など,歌や音楽を使った終末も余韻があってよい。

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