「板書を見れば授業のよしあしが一目でわかる」学校現場では,このような言葉をよく耳にする。板書は教師の教材解釈や授業づくりの意図を写す鏡ともいえる重要なものである。
板書には次のような機能があるとされている。授業では,これらの機能を生かし,効果的な板書構成を考えていくことが大切である。
特に重要な点は,後から確認したり,振り返ったりすることができる。
子どもの発言内容を要約して板書することによって,それらを明確に整理できるとともに板書事項を全ての子どもたちに視覚的に伝達することができる。
道徳授業で子どもたちに追究させたい価値の共有化,また,ねらいの達成に向けた共同思考の活性化を図ることができる。
板書は子どもの感じたことや考えたことを可視化する。そのため,子どもに価値について考える契機を与え,自分を見つめ直させる発展性ももっている。
道徳の読み物教材には縦書きが多いことから,小学校低学年など,年齢が低いほど縦書きの板書が多く見られる。しかし,必ず縦書きでなければならないことはない。教材文の書式やワークシートと関連させ,より効果的なレイアウトを考えるとよい。
主人公の心情の変容を中心にする場合は,話の流れに沿って,吹き出しなどを用いながら,その時々の主人公の心情を板書するとよい。その際表情のイラストや心情曲線を使うと一層効果的である。
主人公の葛藤を考えさせたり,登場人物の心情や立場の違いを比較させたりしながら,子どもたちの考えを深めていきたい時には,葛藤や対比を強調する板書が効果的である。
<葛藤を中心にした例>
<上下で対比させた例>
<4分割で書き分けた例>
<吹き出しを使った例>
年齢にもよるが,文字量が多すぎると子どもは情報をうまく整理することができない。どの程度の文字量を書いていくのか,教師は子どもの反応も予想しつつ,板書計画を立てる必要がある。発言内容もそのまま書き写すのではなく,ポイントを絞って箇条書きにしたりキーワードで示したりし,子どもが思考を整理しやすくなるよう工夫する必要がある。
子どもの理解を深めたり思考を活性化したりするためにも,板書するタイミングは大切である。教師が板書している時間は,子どもが板書を見ながら思考を整理する時間でもある。教師は「発問-子どもの発言-板書」のサイクルの中で,授業のリズムが単調にならないよう,また子どもの思考を中断しないようタイミングを考えた板書をする必要がある。
近年,マグネット式黒板の普及によって,絵や短冊,ネームカード等,他の教具の活用がいろいろと工夫されている。また,大型テレビや電子黒板を用いて場面絵や写真を提示するなど,ICT機器の活用によって,さらに,子どもたちにわかりやすく,インパクトのある板書構成が可能になるであろう。
参考文献:鈴木由美子・宮里智恵編『やさしい道徳授業のつくり方』渓水社,2013年