文部科学省によれば,「質問」は子どもが本文を見ればわかるもの,「発問」は子どもの思考・認識過程を経るものとされている。ここでは発問を考える際のポイントを紹介する。
発問の種類とそれぞれの特徴を知っておくと,授業づくりに深まりや広がりが出る。
中心場面の前後に価値の把握を効果的にする発問
ねらいとする価値を追求させる発問
意図する内容を角度を変えて見つめさせたり,子どもたちの反応を焦点化して考えさせたりする発問
一定の考えを示さざるを得ないようなある程度の限定を含む発問
例)主人公がその時にしたことは何か?
既習内容と新しい課題がどう関連しているか,またどう相違しているかについて分析・比較・総合させるような発問
例)おおかみは前よりずっといい気持ちとあるが前と後ではどう違うのか?
子どもたちが既に習得している成果なり,思考水準に対して,新しい次元での対立・矛盾・困難を創り出していく発問
例)相手は気付いていないのだから,黙っていてもよいのではないか?
資料中にある場面に即して登場人物の心情や判断,行為の理由などを問い,気付きを明らかにする発問
例)温度計を踏んで割った時,さち子はどんな気持ちだったのか?
資料のテーマそのものに関わってそれを掘り下げたり追求したりする発問
例)本当の親切とはどのようなことか?親切にすることが大切なのはなぜか?
注)②,③の発問例は筆者が作成
1授業での発問数といっても実に様々である。「展開部分」の中心発問1つだけで進める授業もあれば,「導入」,「展開」,「終末」等の各段階で複数の発問を行う授業もある。一般的には「導入」で1~2,「展開前段」で基本発問1~3,中心発問1,補助発問1~2,「展開後段」で1~2,「終末」で0~1の7前後が平均な道徳授業の発問数といえるのではないか。
発問を考える際に,教材文を基に展開する「展開前段」のどの場面で発問するかは,特に重要なポイントである。そこで「心情曲線」を使って発問ポイントを確認するとよい。
図1 心情曲線による教材分析
この方法は,ストーリー性があり主人公の葛藤や変容が描かれている多くの教材に使える。教材文を読みながら,主人公の気持ちや道徳的価値に関する考えがプラスなのかマイナスなのか,図1のような心情曲線を描いていく。慣れると数分で簡単に描けるようになる。
心情曲線が描けたら発問場面を考える。大体,心情が大きく上がったり下がったりする手前に主人公が変容するきっかけがある。そこは山場(中心発問)になりやすい場面でもある。波線部分のように主人公の心が揺れ動く葛藤部分も子どもが考えを深めやすい場面である。それらの場面でどのような問い方をすれば多様な意見が引き出せるか,具体的な問い方を考えるとよい。また,心情が最も高くなる場面と低くなる場面,そして,児童生徒の本音や実態が引き出せる場面などを外さないようにすると深まりのある授業になる。
一般的には,中心発問+補助発問→基本発問の順に構想することが多いようである。
注)「割れた温度計」は広島市教育員会『規範性を育むための教材・活動プログラム』2011年,心情曲線は鈴木由美子他編『やさしい道徳授業のつくり方』渓水社,2013年を参照