[本文より]
生徒「黒船が来た後,不平等条約を結んで開港したのは,横浜,函館,新潟,神戸,長崎だって覚えていたのに,先生が“地図の中でどこか”っていう問題出したから,答えられませんでした…」教師「それくらいの都市なんて,地理でもやっているんだし,どこにあるかなんて常識だろう?」私が駆出しの社会科教師として福岡県内の中学校で指導していた頃,定期考査後の生徒との会話である。威厳たっぷりに言い放ったものの,社会科学習の要として「地図は地理」そして「年表は歴史」とステレオタイプ的に決め込んでしまっていた自身の指導の在り方にひどく反省させられ,しばらく,自己嫌悪に陥ってしまったことを記憶している。
福岡教育大学教授 豊島啓司