半田は、江戸時代から酒づくりの盛んな町でした。酒造家は、1697(元禄10)年に17軒、1862(文久2)年には75軒もありました。1811(文化8)年、酒造家の中野(中埜)勘次郎が、日本酒を搾ったあとの酒粕を使った粕酢の製造を始めました。この「酢」が江戸の寿司屋で大好評となり、発展して現在の(株)ミツカンの基礎をつくりました。ミツカンは現在も半田に本社があります。写真は、中埜酒造の施設を使った「酒の文化館」の外観。「黒塀」は板壁で、黒い塗装は、渋墨(しぶずみ)塗といって、日本古来の伝統技術です。渋柿を絞ってとった液を発酵・熟成させ、松を焼いてとった煤を混ぜて溶いたもので、防虫・防腐・防湿効果が高い板壁です。窓は漆喰(しっくい)で、格子がはまっています。写真中央下の窓には、杉玉(すぎたま)がかかっています。杉玉は、酒林(さかばやし)とも言われます。
愛知県名古屋市 井上隆夫