読んでおきたいこの一冊[四次元時計は狂わない]~21世紀 文明の逆説~
著者 立花 隆
発行 文春新書 2014年10月)
「立花隆氏は、ジャーナリスト出身の評論家です。特にその驚くべき読書量と、徹底した現場主義を貫く多数の著作で有名です。そのゆえあって、彼は「知の巨人」の一人として多くの人々に認められています。
その「知の巨人」の目を通した日本の未来社会は、いったいどのような姿なのでしょうか。一言でいうと、私たちの空間に時間を加えた四次元時計はけっして狂うことはないと、著者は明るく将来を見通しているのです。ともすれば私たちの未来社会は、少子高齢化社会や財政赤字の累積、国民所得の格差拡大などの問題が重苦しく覆い被さりますが、著者の視線はけっして下向くことはなく、むしろ私たちの思いもしない角度から新たな事実を摘出し、あるいは明るい材料を拾い上げて希望の光を示してくれるのです。本書は、沈みがちな私たちの精神に新たな勇気を注入する希有(けう)な随筆集だともいえます。
元白梅学園大学教授 日本学校図書館学会 名誉会長 村越 正則