巻頭論:「確かな学力」と「生きる力」
安彦忠彦(あびこただひこ・早稲田大学教授)
中学校社会-教室の窓No.1(創刊号)
東京書籍2004年3月発行
[本文より]
平成16年度から学習指導要領が一部改訂されるが,それは決して方針や原則の変更ではなく,従来の方針の一層の周知徹底をめざしてのことである。この点は疑いようがないことであり,もし疑う人がいるならば,その責めはその人が負うことになろう。なぜ従来の方針や原則が変わらないのに部分改訂を行うのか。これにはいくつかの要因がからんでいる。とくに大きな要因と考えられるものの一つは,関係省庁の決定よりも内閣府の決定が先行し,優先されるため,外から見ると行政府の方針や原則が揺れて見えることがある,ということである。この事態について多くの人,とくにジャーナリズムが注意を喚起すべきなのに,ほとんど誰もこの点を論じないことは残念である。
早稲田大学教授 安彦忠彦