[本文より]
本論では,資料活用能力を育てるために参加型学習を利用することを提案する。「参加型学習」とは,生徒の主体的な授業参加をねらいとし,その実現のために多様な体験的学習活動(「アクティビティ」)から構成される,学習の一つのまとまりを意味する。中学校社会科用教科書『新しい社会 公民』(東京書籍)で取り上げられている,「ちがいのちがい」(P.30)や「ハンバーガーショップの経営者になってみよう!」(P.94)などは,参加型学習の典型的な事例である。それらの活動が生徒の主体的な授業参加を促すこと,また,それらの活動が単元の本質的な内容にまで迫りうる高い教材的な価値を有していることは,先生方の多くが経験的に知っていることであろう。しかし,参加型学習の長所はそれだけにとどまるものではない。参加型学習には,授業を楽しくすること以上の意義がある。それは,講義形式の知識伝達型の授業から,ワークショップ形式の知識創造型の授業へと社会科授業を転換するのに役立つ。さらに,参加型学習のアクティビティは「学び方」そのものであるため,参加型学習を通して,生徒は資料活用能力に必要不可欠な様々な学び方を習得することになる。
筑波大学講師 唐木清志