桑原武夫氏は,文学作品は「私たちがそれを読むという行為を媒介としなければ,文学として存在しない」〈注1〉と述べている。この当然のことが,しかし,教材研究の場や教室の場で,忘れられていることはないだろうか。文学作品が読むという行為を媒介とするということは,文学作品の指導は「その根本において,原理的に,主観性を基盤に持っている」〈注2〉ということである。もちろん,主観的だから何でもいいというわけではない。その読みは,文脈を根拠にして(あるいは文脈から推測される範囲内で),他者に「了解」〈注3〉されるものでなければならない(本文より)。作品の謎解きを生徒自らが行う授業を展開する実践事例。
栃木県佐野市立南中学校 井上裕一