●エッセイ 言葉をさがす
児童文学作家 吉橋通夫
中学校国語-教室の窓Vol.10
東京書籍 2007年4月発行
[本文より]
山寺や石にしみつく蝉の声 どこかで聞いたことがあるような俳句ですよね。これは,松尾芭蕉が山形県立石寺で詠んだ句です。というと,「上五と中七の表現が間違っている!」と叱られるかもしれません。では,次の一句は,いかがでしょう。 さびしさや岩にしみ込蝉の声 ここまで書くと,「ははん,そうか」と分かってきた方もいらっしゃると思います。これらの二句は,閑かさや岩にしみ入蝉の声に至る前につくられた句なのです。つまり推敲の過程で生まれたものです。
児童文学作家 吉橋通夫