[巻頭言]読書について考えない。
阿部夏丸(作家)
中学校国語-教室の窓Vol.6(2006年1月発行)
[本文より]
僕は文筆を生業としているが,読書については,あまり考えないようにしている。というか,読書がそれほど好きでもないし,それほど重要と考えてないのだ。資料としての本は必要にかられて開きはするが,暇ができたからといって小説を読んで楽しむことはあまりない。読書をする時間があれば,昼でも夜でも,夏でも冬でも川へ行って遊んでいる。小説家がすべて読書好きだと思っている人は多いようだが,僕のような人間もいるのである。まあ,「酒を飲まない酒屋の店主がいてもいいんじゃないの」って感じだ。ウソでも読書は楽しいし大事だよって言っておけば,世の中,丸く治まるのだろうが,根が頑固者なのでそうは言えないのである。
作家 阿部夏丸