指導直前情報「かけはし」2005年1・2・3月号より。教科書に掲載されている向田邦子のエッセー「ごはん」は,すでに大人になっている語り手が,かつての少女時代の体験を回想しているというかたちになっています。その語っている現在と語られている過去との時間差は,たとえば,かつての三十歳くらいの母親の姿がいまの妹の姿にそっくりだと述べている箇所(教科書214ページ)などに表れています。ですが,少女時代の向田邦子の姿に隠れて,語っている大人の向田邦子の姿はあまり前面に出てくることがありません。読む側の興味関心は,おおかた,少女・向田邦子の見たことや感じたことに集中することでしょう。
東京書籍(株) 国語編集部