指導直前情報「かけはし」2005年6・7月号より。本教材は,人物形象や表現効果をとらえさせたり,作者の人生観等と対峙させるなど,文学作品としての様々な取り扱いが可能である。しかし,「読書で考えを深めよう」という単元名からは,本教材の指導のねらいが,表面的な内容理解や言語事項の学習にとどまったり,空想的な読み広げをすることにあるのではなく,作品世界に描き出されている同世代の人間の姿と真摯に向き合い,その中から生きることや文学,青春に特徴的な事柄などを問題として取り上げ,考えを深めていくことにあることがわかる。すなわち,作品の内容価値を中心とする取り扱いが期待されていると言える。
信州大学教授 益地憲一