[本文より]
国語科の新教育課程が施行されて間もなく2年になろうとしている。「伝え合う力」という目標を受け,「話すこと・聞くこと」の領域では,コミュニケーション能力の育成が高く掲げられ,インタビューやグループ討論といった双方向的な活動が盛んに取り入れられるようになった。それはそれで結構なのだが,ここへ来て問題点も明らかになってきた。「危うい状況」と言い切る関係者もいるほどだ。結論を先に言えば,活動の枠組みはできたものの,肝心の相互交流がさっぱりなされていないのだ。一見活発に話し合っているように見えて,よく聞いてみると,それぞれが調べたことや感想を発表し合うだけで,「話線」が交わっていない。そのため,話し合いが,認識を深めたり広げたりすることにつながらないのだ。
スピーチコミュニケーション教育研究所所長,前お茶の水女子大学教授 村松賢一