短歌は、現代においても日本の文学の最も重要なジャンルの一つである。しかし、生徒たちが最も苦手とするのもまた短歌である。短歌はもともと人々が互いの思いを伝え合う、いわばコミュニケーションのツールであったから、難しいはずがない。彼らの苦手意識がそう思わせているだけのことである。とはいえ、現に存在するこの壁をどう乗り越えさせるか、それは教師の重要な課題である。そこで、口語訳や古典文法、短歌の修辞を学習するだけでなく、短歌を歌物語風に読ませてみようと考えた。テーマは「愛」。禁じられた男女の愛と権力に翻弄される兄弟愛、二つの愛を取り上げる。一連の短歌を口語訳しながら、“事件”とその背景を知った後、作者やその関係者に思いを巡らして物語を作る。そして、できあがった作品の批評を通して、短歌というものをもっと身近に感じ、より深い読解を目指そうという試みである。
愛知県立瑞陵高等学校 黒田あつ子