[本文より] 自分自身が予想もしなかった作曲という音楽の道を選んで半世紀,沢山のひとびとに出会い数多くの子どもたちと出会って,作曲の幹が弛まずに育ってきたようにおもう。
教職をふくめてその間私は,定職についたことは一度もなく,自分のことながら激動の長い時代をよく生きぬいてこれたなあという感慨が,いまの私にはある。
私の子ども時代はまさにあの戦争と共にあった。身のまわりのすべてに戦争の影が色濃く投影されはじめたあのころ,優しい女の先生の弾くオルガンの響きにのせて歌う唱歌の授業は,とても待ちどおしい時間だった。
作曲家 湯山昭