[本文より]
2002年1月フィンランドでの演奏の最中に,ステージ上で脳溢血を起こして倒れ,右半身不随の身体になりました。2か月間入院し,退院後は自宅療養に努めながら,演奏家として復帰できるように努力を続けたのですが,凍てついた身体はなかなか動くようになってくれませんでした。手足が動かないのも大変ですが,舌も回らず,人と意思を疎通するのにも苦労しました。体力の衰えが激しいだけでなく,記憶も薄れました。でも,なによりも辛かったのは,自分の気持ちに弾みがなく,考えを持続・発展させる力がなくて,すべてが停滞しているのに気がついたことです。
ピアニスト 舘野泉