[本文より]先日,篠田正浩監督の『スパイ・ゾルゲ』の予告を見ていて宮城与徳のことを思いだした。
宮城与徳は,沖縄に生まれ,1910年代の末に米国西海岸に移住した,国吉康雄やイサム・ノグチと同時代の画家,いや画家を目指した青年だった。けれども彼の人生の舵は,クニヨシやイサム・ノグチとは,まったくちがった方向へと,みしみし切られていく。この地でコミニズムに触れた与徳は,当時のコミンテルンの指令により,日本へ逆潜入。いわゆるゾルゲ機関の一員として活動をし,検挙,獄死したことで歴史の裏面にかろうじて名を残している。
「美育文化」編集部 穴澤秀隆