[本文より]夏休みに入り,地域には親子連れが目立つようになった。私がよく出かけているある博物館も,普段,ほとんど来館者がいないのだが,子どもたちのにぎやかな声が館内に響いている。親子で体験講座というのが開かれているからである。かつて博物館は,展示物を静かに「見る」だけの場所だったが,最近では,「話す」,「聞く」,「触る」,「つくる」などの要素を取り入れた参加体験型の活動が盛んになってきた。博物館のこうした動的な活動を「教育普及活動」と呼んでいる。例えば,博物館の学芸員を示す英単語には,・curator(キュレーター:収集,保管,展示,調査・研究担当学芸員)・educator(エデュケーター:教育普及活動担当学芸員)という二つがあるのだが,我が国においては,教育普及活動が重視されなかったため,キュレーターだけが辞書に示されている。学芸員資格取得にも教育普及活動関係の授業科目を履修する必要はない。1999年に山梨大学教育人間科学部に芸術運営コースというエデュケーター養成コースが設置されたが,日本で最初でまだ唯一の養成コースである。実は,私は,このコースの担当教員でもある。そこでは,ファシリテーター,ワークショップ,ハンズオン,アウトリーチ,プリーズタッチ,チルドレンズ ・ミュージアムなど,日本語に訳してしまうことに少々問題がある言葉を使った授業が行われている。もちろん,「教育普及活動論」という授業もある。
山梨大学 栗田真司