[本文より]
国語の教科書は,すぐれた教材である前に子どもたちにとって親しみやすいものでなくてはならない,という思いはいまも変わることがありません。とりわけ文学教材は,教える側の視点よりも学ぶ側の視点に立って選ぶべきです。いかに現場の先生たちに人気のある作品だからといって,いつまでもそれに頼っていてはかつての国定教科書と同じになってしまいます。各社が競いあっての教科書づくりなのに,どうして共通教材なんて作品が存在するのでしょうか。しかし,教科書である限り1冊でも多く採用されることが大前提です。そのためにはどんな作品を取りあげるべきか,編集委員の一人として常に考え続けてきました。
昭和女子大学名誉教授 西本鶏介