[書写]ことばの育ちと文字の学習
横浜国立大学教育人間科学部助教授 青山浩之
小学校国語-教室の窓Vol.8
東京書籍2006年9月作成
[本文より]
3歳9か月の幼児を観察していて,あらためてことばの育ちの不思議さやおもしろさを感じる。この男児の場合,たとえば,廊下で両腕をいっぱいに広げて「この戸は二度とあかないよ。」と通せん坊したり,お皿に一つ残されたイチゴを見て「どうせなら食べちゃおっか。」と母親の顔を見たりする。事柄の強調や状況の判断をともなう微妙な言い回しを,下線部のようなことばを使って伝えようとする姿がすでに観察される。もっとも子どもによって個人差はあるが,その子に応じたことばの育ちを実感したとき,そうしたことばをいつ覚えたのかと不思議に思うのと同時に,子どもどうしや大人とのかかわりの中で,覚えたことばを状況に合わせて使おうとする力に驚きを感じることもある。
横浜国立大学教育人間科学部助教授 青山浩之