[本文より]地図を読もうとすると,まず地図表現や地図記号に悩まされる。たとえば,地形図では,土地の高さと起伏は同じ海抜高度の地点を結んだ等高線で表現されているため,実際の地形や土地利用の読み取りには,頭の中での等高線の3次元化が必要とされる。しかし,この3次元化は,それほど容易なものではない。まず,等高線の間隔が狭いほど傾斜が急であり,縮尺の大小よって表現される起伏は変化することを理解していることが求められる。さらに,集落・農地・交通路などの土地利用を示す地図記号を理解し,地形と土地利用との関係を読み取る能力が必要とされる。究極としては,脳裏に水田・畑・森林などが塗りわけられた状況で地域がイメージできれば,「地図が読めた」といえる。
日本大学教授 佐野充