『人は見た目が9割』について
「人は見た目で判断してはならない」と言うが,実際はかなりの部分が見た目で判断されている。しかし,このことにさして矛盾を感じないのが,世間一般ではある。著者は,人間が伝達する情報のなかで話す言葉の内容が占める比率は7%に過ぎないと,心理学の研究結果を紹介している。そして,人のコミュニケーションの9割はノンバーバル・コミュニケーション(言語以外の伝達)であり,顔つき,仕草,目つき,匂い,色,温度,間ま,相手との距離など,言語以外の情報,すなわち「見た目」こそが重要であると主張する。日本も欧米も共通してノンバーバルを重視するが,欧米がオーバー・アクションにより主張するのに対し,日本では語らぬコミュニケーションが重視され,発展してきたという。「分からせ,自分を通す」のではなく,「語らず,察する」のが日本流であると。しかし,日本人はノンバーバルを大切にする「無口なおしゃべり」であり,だから日本では「相手を説得する技術」「演説する技術」は発達しにくいのだとの主張に,なるほどと納得する。
前千葉県船橋市立船橋中学校長 岩崎永夫