教室の窓「小学校家庭 中学校技術・家庭Vol.3」2005年4月号 より。ボクは全盲のイラストレーター。目が見えないで絵をかいている。それを人はどう思うのだろう。自分には見えないはずの絵をかいて,そのどこが面白いのだ。おそらく,そう考える人がいるに違いない。ところが面白いのである。白い紙にペンを走らせると,そこから生まれる描線が見えてくる。立ち上がり,全身を使って絵筆をふるうと,画面に毛先によるタッチが感じられる。不思議だけれど,わかるのだ。説明不可能かもしれないけれど見えてくるのだ。だから面白い。そして驚くのは,ボクが面白いと思えば,見てくれる人もその作品を楽しんでくれるということだ。ヘタクソでもいい。未完成でもいい。そこにどんな絵が生まれていようとも,自分以外の人が作品を楽しんでくれさえすれば,それでボクは幸せなのだ。
イラストレーター エムナマエ