[本文より]
ゆとり教育批判の嵐が吹き荒れている。昨2004年の末に,OECDやIEAによる国際学力調査の結果が相次いで発表され,日本の高校生の学力が従来までの好成績を維持できていなかったからである。結果の解釈の妥当性はおくとして,不思議でならないのは,20年来ゆとり教育を進めてきて,いわばその「成果」が出ているのに,なぜ批判されるのかということだ。受験競争が激しすぎる,詰め込み教育では考える力が伸びない,教育を多様化させて真の学力を身につけさせろ--というのが,ちょっと前の世の風潮ではなかったか。今さら何を騒いでいるのだろうか? もちろん,基礎的な学力がなくて良いということではない。しかし,どうも,カリキュラムや指導要領がどうこうという部分より,もっと深いところに構造的な問題が横たわっているような気がする
東京大学情報学環助教授 佐倉統