巻頭言「食事がないがしろにされている」
EduNews Vol.16
エデュニュース-教育行政向け情報誌-
編集:東京教育研究所
東京書籍2007年7月作成
[本文より]
「私の家にはコンビニ弁当しかないの?」と聞く子に「嫌なら食べなくていい」と冷たく言い放つ母親。この家では母と子の三人暮らし。母は仕事に追われ,食事は専ら買ってきた弁当で済ます。食べても心は弾まないし,会話もほとんどない。親の「ビタミン愛」の詰まった手作りの食卓は,とんと経験がない。朝はしばらく食べたことがなく,「給食が楽しみ」と言う。「自分で作ったら?」には「飲み物しかないし,お金も持たせてもらえない」と寂しそう。この生徒だけではない。朝食抜きは珍しくなく,「食べた」と言うから聞くと,「食パンと水」と答える生徒も。休日の食事が三食ともカップ麺をはじめ,菓子パン,市販弁当などがほとんどと言う生徒の何と多いことか。それも一人で。私が勤務していた中学校での実話であり,手作りの食を用意できない親の存在に,社会の病理を見るのである。
千葉県立衛生短期大学教授 岩﨑 永夫