はじめに
現代学校経営38
監修・編者 無藤 隆(白梅学園大学学長)
現代学校経営シリーズ38 「人間力」の育成を目指す学校経営
東京書籍2007年4月発行
[はじめに(前文)]
人間力の形成は今後の学校教育の大きな課題となる。だが,その人間力を人間の人格のすべてを含むものとしてとらえるのではなく,学校教育の成果として,将来,世の中で社会的公正を果たすうえで的確に機能しうる大人として送り出そうという目標の下で考えるのである。
個人としてしっかりとした意志と意欲と自律性を備えた人になってほしい。他の人と協力して活動し,実りを上げるやり方が分かり,他の人を尊重し,共感して共に生きていけるようになってほしい。さらに,社会の中のルールや規範が分かり,それを厳として守ろうとし,また文化の成果を受け止め,自らのものとしてさらに発展させるようになってほしい。本を読んだり,情報を発信したり,また歴史を受け継ぎ,豊かな文化の形成者になってほしいのである。
そういった資質・能力を総合して,人間力と呼ぶ。学力を含みつつ,対人関係能力や社会規範や文化への尊重などを含めて考える。そのように見ていけば,どの学校であっても日ごろの教育活動を通して大事にしていることそのものではないだろうか。学校が育てようとしているものを総体としてとらえられるのである。