おわりに~今後の「義務教育の構造改革」に向けて~
現代学校経営36
監修・編者 無藤 隆(白梅学園大学学長)
現代学校経営シリーズ36 学校力の向上-その経営戦略と実践-
東京書籍2006年4月発行
[おわりに(前文)]
平成十七年五月に,本書の委員会が「学校力の向上」を中心テーマに据えて発足した。以来,各校で優れた実践を積み上げてこられた委員の,まことに熱意ある協議が重ねられてきた。この協議においては,近代経営学的な発想に基づく的確な教育の成果を,日頃の学校教育活動の中に導くための方法論が中心となっていたことが印象的であった。
とかくこれまでの学校教育では,「教育の成果は一朝一夕に論ずることはできない。少なくとも二十年のスパンで判断しなければならない」とか,「教育は人間性に深く関わる職務であるから,単純にP・D・C・Aのマネージメント・サイクルだけでは捉え切れない」などといった論が関係者の口にのぼることが多かった。また,従来の内部の教員による学校評価を一つとっても,自分には甘く,校内に様々な問題を抱えながら,うまくいかないのは家庭の教育力の低下や社会の激しい変動にその原因があるのだといった言い訳や責任転嫁の風潮がないではなかった。かくして,学校教育は,永く「聖域」の枠内に止まり,学校自らが胸襟を開いてその中身を地域や保護者に発信することにためらいがちであった。本委員会の協議においては,このような悪しき習癖を乗り越えたところからのスタートとなった。