[本文より]
義務教育については,保護者がその子女に教育(9年の普通教育)を受けさせる「就学義務」と同時に,就学させるうえでの経済的諸条件を取り除く「保障義務」,就学を可能にする諸条件を整備する「設置義務」があることなどに照らして,義務教育諸学校施設費国庫負担法,義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律などが制定されているが,教育の機会均等の確保と全国的教育水準の維持の観点から義務教育費国庫負担法がある。これは上の観点を実現するために,義務教育諸学校の教職員給与等に対する助成を定めた法律である。学校教育法第5条は「学校の設置者は,……法令に特別の定のある場合を除いては,その学校の経費を負担する」と,いわゆる設置者経費負担主義を規定している。しかし,地方財政法が,その第10条で,「国が進んで経費を負担する必要がある」ものとして,「義務教育職員の給与(退職年金及び退職一時金並びに旅費を除く。)に要する経費「義務教育職員の共済組合の長期給付に要する経費(共済組合の長期給付に要する追加費用に係る経費を除く。)」「児童手当に要する経費」などを掲げていることが,義務教育費国庫負担法の重要な根拠となっている。教職員給与等については,都道府県がこれをまず負担し,次いで国が政令で定める一定の限度のもとで,その2分の1を負担するというしくみになっている。
放送大学教授・埼玉学習センター所長 新井郁男