[本文より]ワールドカップ・イングランド大会(1966年)は,当時,高校生だった私が初めて見たワールドカップであった。もちろん,それはサッカーの月刊誌によってであり,同大会の終了後に制作され,上映された映画「ザ・ゴール」によってであった。日本が東京オリンピック(1964年)で金星を上げ,メキシコオリンピック(1968年)では銅メダルを獲得する成績を残しても,サッカーの真の世界大会はワールドカップであり,「ザ・ゴール」で見たあのスタジアムから溢れんばかりの大観衆が,世界のサッカーは日本のそれとはまったく違うことを私たちに気づかせてくれた。甲子園で盛り上がる野球とは違い,グラウンドの片隅で細々と行う当時の日本のサッカーは,世界のレベルを考えたとき,悲しいほどさみしいものであった。
筑波大学附属駒場中・高等学校教諭 小澤治夫