巻頭言:これからの保健教育
[本文より]
過去半世紀の間に,日本人の平均寿命は,男性,女性とも30年近く伸長し,世界有数の長寿国となった。この寿命の延びの大きな要因は,戦後の,医学の進歩,薬学の進歩,公衆衛生の発達から感染症などの疾病による死亡が減少したこと,栄養・教育・生活水準の向上や包括的な保健医療システムの実現で乳児の死亡率が激減したことなどによるものである。平均寿命が延びている背景の一つには60歳以上の死亡率の改善がある。戦前生まれのこの年齢層は,身体を酷使した手工業中心の時代に育ち,戦争の影響で食料不足のため,粗食に耐えて生きてきたのである。これらの高齢者は,労働による十分な運動,粗食ではあるが調和のとれた食事,疲労があっても十分にとってきた睡眠と休養などにより,健康そのものの生活を送ってきたといえる。
武蔵丘短期大学教授 齋藤喜能