[本文より]近年,「英語のコミュニケーションでは発音はたいした問題ではない」とか「英米人のような発音で話す必要はない」というような主張がしきりに聞かれるようになった。それと同時に,‘Englic' ‘Japalisc' ‘Janglisc' などというような聞きなれない語をしばしば耳にする。いうまでもなく ’Englic' は,English と「~の,~的な」という意味の形容詞をつくる接尾辞 ‘-ic' を合わせた語であり,後の二語はEnglish と Japanese からの混成語である。提唱者によって微妙なニュアンスの違いはあろうが,いずれも要は「日本人式英語」でかまわないのではないかという提案である。国際共通語としてコミュニケーションに実際に役立つなら,あえて英米人の発音を模倣するまでもないということだろう。
山形大学名誉教授 金山等