巻頭言:突然変異のすすめ
[本文より]
「この子はやったらできるんですけどねえ」と,私が小学校2年の時に先生が母に言った。私は勉強が嫌いで,自らすすんで勉強することはなかった。ただ,この一言がいつも頭の片隅にあリ,成績が芳しくないのは,単に勉強しないからであり,その気になれば人には負けないと信じていた。その後,中学,高校とそこそこの成績で,特に受験のための猛勉強もせずにそこそこの大学に入学した私は,結局,中退して,他大学に再入学した。楽に生きてきて,生涯一度も真剣に勉強もせず,自分の能力を試すこともなく,このまま卒業して社会に出てもいいのかと思ったからである。
山梨大学工学部教授 城戸淳二