小学校算数・中学校数学-教室の窓Vol.8(東京書籍2006年9月)より。
戦後教育改革期は,それまでの価値観や国家体制が終戦によって一転した,社会の転換期である。平和な新しい時代の教育が模索された時期で,現在の教育に対する考え方や教育制度の原型が,この時期に作られている。例えば,算数・数学で語られている「よさ」は,昭和26年の算数科の学習指導要領(試案)において既に見ることができ,当時の考え方が現在にも通じている。このような,現在において重要なことがらも,当時の議論を振り返ることで,本来の意図をより鮮明に浮かび上がらせることが可能である。今回は,特に「自ら考える」ということについて,当時「科学的教養」のための算数・数学の役割が議論されていた点から見てみたい。
東京学芸大学教育学部助教授 蒔苗直道