[本文より]
デザイナーにとって最も大事なセンスは美意識である。美意識のないデザイナーはデザイナーではない。中でも均整のとれたプロポーション感覚は不可欠だ。デザイナーは社会的貢献を使命としている。かたちのプロポーションが悪いと人々は不快感を感じる。特にインダストリアルデザインは,工業的に大量生産される日常生活の道具がデザインの対象となっているだけに,社会的影響は大きい。だからデザイン教育の中でもプロポーション感覚の向上には時間がかかるし,どんなに頭がよくてもプロポーション感覚に欠陥があっては,デザイナーとしては失格である。しかし音痴でも努力すれば何とかなるように,プロポーション音痴も修練しだいではその感覚を会得することができる。
インダストリアルデザイナー 栄久庵憲司