[社会科の焦点]社会科における「経験」 「経験」が「心」を培う
[本文より]
去年と今年,長崎と佐世保で起こった中学生と小学生による痛ましい殺人事件。このような事件が起こるたびに,識者は現代の子どもたちの暗くて奥深い心の闇を問題にする。心理学者や精神病理学者は彼らの測りしれない心の領域を解き明かそうと躍起になるし,為政者は為政者で,事件の再発を防ぐために心の涵養を一所懸命説いて回る。もちろん彼らの見立てや処方箋には傾聴すべき点もないわけではないが,私にはどうも隔靴?痒の感を免れない。子どもの「心」に過重な重みをかけすぎているような気がしてならないのである。
京都大学教授 間宮陽介