[本文より]わが国の武芸の種類について,最も早くこれを要約したのは『平治物語』である。
『馬に乗り,はせ引き(騎射),早足(脚力),力持ち(相撲)など,ひとえに武芸をぞ稽古せられける』とある。
ここに挙げられた「馬」「弓」「早足」「相撲」の四種のうち,早足は基本的な訓練でありながら,術として成立した流派名もわずか数流にすぎない。
1716(享保元)年に発刊された『本朝武芸小伝』は,各流派や流祖たちの列伝として信頼度の高い書物であるが,ここでは武芸を「兵法(軍学)」「諸礼(礼儀作法)」「射礼(弓術)」「馬術」「刀術」「槍術」「砲術」「小具足(逮捕術)」「柔術」の九つに分類している。
江戸時代に“武士の六芸”とされたのは,「弓」「馬」「槍」「剣」「砲」「柔」のことで,いずれも武芸のうちに含まれるものである。
したがって,ごく一般的に言えば,武芸とは「武士として身につけるべき闘争の技術である」と理解してよいだろう。
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Kimio Sone