[本文より]「みちこち」って何?と妻に聞かれた。正月に帰省したとき母が使った方言らしいが,筆者は知らなかった。
「どういう状況で使っていたの?」
「台所でおばさんと3人で料理の盛り付けをしていたときにお母さんが『みちこちにして』とおっしゃったの」
「…」状況を聞いてもわからない。仕方なく母に直接尋ねた。
「はははは(笑),『みちこち』っていうがんは(と言うのは),たくさんいろいろ盛りつけることやいね(盛りつけることだよ)」
私には,自分の方言を知らなかったことよりも,状況を聞いたにも関らず意味を推測できなかったことがショックだった。そしてその場面にいて,おろおろしたであろう妻に同情したが,妻曰く,理解不能の言葉などはしょっちゅうあって,近頃は慣れっこになったらしい。
「文脈を利用する語彙学習」と題した2000年2月号の「私の研究」では,文脈は役に立つと主張したが,今回は文脈が役に立たないかも,と弱気になっている。これはどうしたことか。
学習院高等科 山本昭夫