[本文より]私がはじめて文法用語に関心を持ったのは3年前のことであった。今は休刊となった研究社の現代英語教育10月号~12月号で若林俊輔(1996:10) が「文法用語が英語を理解しづらくしている一因であり,現在使用されている文法用語を全廃しよう」と主張したのに対し,飯田毅(1996:11) は,「名前(=文法用語-筆者注)があるために,その文法項目を名指しでき,捉えることができる」と文法用語のメリットを説明した。結局,若林も,「学習者にとって分かりやすい文法現象の説明方法を考えていくことが重要」(1996:12) であるという点で意見が一致した。この記事の後,早速,私自身が授業で使用している参考書の文法用語について調査を行った。その結果,大部分の文法用語に関してはこれといって別に問題のないように感じたが,ある一部の文法用語に関しては文法用語の改正の必要性を強く感じた。その中の一つに直説法の基本時制がある。というのは,英語は本来,現在と過去の2時制なのに,大体どの参考書も現在・過去・未来の3時制として扱っているからである。もっとも,最近では,英語の基本時制を2時制として扱う傾向が少しずつ出始めている。しかし,教育現場で使用している教材の変化-特に文法用語-はほとんどないのが現状である。そこで本稿では,最近10年間(1990年~1999年) に出版された高校生対象の英語参考書で,直説法の基本時制-特にwill+動詞の原形-をどのように扱っているのかという点に焦点を当てながら,それが教育的にどのような問題を含んでいるのかということを,今回の調査内容から述べていくことにする。なお,引用文中の下線部はすべて私によるものである。
浦和学院高等学校 鈴木聡