[はじめに]
通訳訓練を取り入れた英語学習法は,英語の運用能力を高めるためにきわめて有効であり,以前から高校の授業でも取り入れられないものだろうかと考えていた。今年度,1年生を担当することになったので,高校生が興味をもち,無理なく取り組めそうな活動を選んで指導することにした。
具体的に活用できる通訳訓練法としては,聞いた英語の後について,その音声をできるかぎり忠実に再生する「シャドーイング」,スピーチをセンスグループや文単位で聞いてから口頭で再生する「リテンション」,センスグループ単位で自然な日本語になるよう心がけながら,文頭から訳出していく「サイト・トランスレーション」などが挙げられる。
最初に指導したのは,サイト・トランスレーションとシャドーイングであるが,そのまま高校の授業に持ち込むには無理がある。そこで,サイト・トランスレーションは,英文をセンスグループ単位で区切り,文頭から読みくだす「スラッシュ・リーディング」の形で,またシャドーイングは,英文テキストを見ながら行う「シャドー・リーディング」の形で取り入れることにした。
通訳訓練法と平行して指導したのが音読,リテンション,音読筆写である。最終的な達成目標を「口頭での英文の再生」に設定しているので,英文を効果的に定着させるこれらの指導も重要となる。
さらに,メモ取りリプロダクションやウィスパリング同時通訳を指導し,スピーキング力の向上をはかった。前者は,英語を聞きながらメモを取り,そのあとでメモを見ながら英文を再生する。かなり高度な活動であるが,正しい手順で段階的に指導すれば1年生でもできるようになる。後者は,ペアになり,一方が耳元で英文を見ながらセンスグループ単位で訳し,他方がそれを英語に通訳する活動である。なお,通訳訓練を取り入れた指導法の達成目標は以下のように設定している。
(1)瞬発力のある英作文力
テキストの和訳を見ながら,スムーズに英語で再生することができる。
(2)自己表現力の向上
テキストの表現や構文を使って,内容の要約を発表できる。
(3)英文保持能力(リテンション)の向上
イラストなどを見ながら,テキストの内容を英語で説明できる。
愛媛県松山聖陵高等学校 野上正樹