[冒頭部分]私にとって人生を豊かにしてくれたもの,それは音楽と語学である。私は10 歳でヴァイオリンと出会い,12 歳で英語と出会った。すなわち,中学生になって初めて英語に触れることになった。当時,ヴァイオリンの練習に多くの時間を費やしていたため,個人的に英語を習ったことはない。私がしていた勉強は学校の勉強がすべてで,教材は教科書だけだったと言っても過言ではないのだ。1 冊の教科書とはいえ,そのころ視覚障害が進行し,すでに自力で教科書を読むことはできなくなっていたので,学習の仕方といえば教科書を最初から最後まですべて暗記することだった。1 冊全部覚えるのは,決してたやすいことではないのだが,新しい単語が出てくるたびにその意味を辞書で引いてもらい,それを覚えることがとても楽しかったと記憶している。そして,高校,大学を通して,試験はすべて先生との1対1の口頭試問でしていただいた。
かわばたなりみち ヴァイオリニスト・川畠成道